第一回レポート完成!!

「関東地方でも梅雨明けしたとみられる」と気象庁が発表し、「曖昧か!」と誰もがツッコんだであろう翌日、茅ヶ崎の浜辺に集う面々があった。年代は様々だ。小さい子供から社会人、その親の世代まで、男女問わず。空は晴天。熱された砂に足の裏を焼かれる。風は熱風で、汗が止まらない。泳げば気持ち良さそうな海までは20メートルとない。けれど、彼らは海に泳ぎに来たわけではない……。

 ほどよく隊形を整えたところで「構え!」の号令がかかった。皆、一斉に右手を前に突き出し、腰を低く落とす。しばらくの静止。20人強の人間が同じ姿勢になり微動だにしない……。そこに、軽快な三味線の音が流れ、突如、同じタイミングで全員の身体が“揺れ”始める!

 金八先生でおなじみ、と言えば伝わる人もいるかもしれない。そう、ソーラン節を彼らはここ茅ヶ崎の浜辺で練習している――宮城県石巻市でのボランティア活動を機会に立ち上げられた“第柔人”主催による『第一回、第柔人とおどるっぺ』が行われているのである!

 

 今回、参加者のほとんどはソーラン節を踊った事が無い。皆、拡声器で振り付けの指導をするヒロの説明を真剣に聞く。「もっと重い物を掴んで放り投げるような感じで!」

 ソーラン節はニシン漁の踊りだ。その動作ひとつひとつに意味が込められている。例えば両手を右に左にと伸ばし腰低くまで持ってくる振り付けは、船の縄を引くときの動作だし、何かを足元にかきあつめて遠くに放り投げるような振り付けは、網を海に投げ入れる動作が元になっている。

 通して3分強の踊りとはいえ、覚えるのは大変だ。砂浜という不安定な足場の上で腰を低く落とすため、体力の消耗も激しい。熱いので、休憩をこまめにとりながら少しずつ振り付けを進めてゆく。ぎこちないながらも、皆、徐々に感じを掴んでゆく。

 ちょうど時間もいいところで最後の振り付けまで辿り着くことができた。仕上げに声出しの確認をする。簡単に二つの組に分け、“呼”と“応”の関係をつくる。片方が「ソーラン! ソーラン!」と言えば、もう片方が「ソーラン! ソーラン!」と応戦する。また片方が「どっこいしょ! どっこいしょ!」と言えば、さらに片方が「どっこいしょ! どっこいしょ!」となるようにする。これをやるのとやらないのとでは、迫力が全然違う。

 さあ、最後に一発通そう! となったとき、誰からともなく「もっと周りの人も巻き込んじまおう!」ということになった。特攻隊長よろしく、メンバーの一人が海の方へと駆け出す。まったく第柔人とは関係のない海水浴客のお兄さんお姉さん、お父さんお母さん、果てはライフセーバーのお兄ちゃんにまで声をかけまくる。

 だ、大丈夫なのかな……? 結果として、そんな緊張が走ったのは一瞬だった。

 なんと、茅ヶ崎の皆さん、予想以上のノリの良さで次々と飛び込み参加をしてくれるじゃないですか! ありがとう! 感動しました! 最終的な人数? ちょっとわかりません……。数えられませんでした。そのくらいたくさんの人数で踊ったソーラン節は、映像としてもUPしてるのでぜひご確認を。だって凄いから。

 

 さて、先にも書いた通り、ソーラン節は漁の踊りだ。だから記念すべき第一回を海辺で、しかも大成功で締めくくれたのは本当に嬉しい。もちろんまだまだ磨いていかなければいけないところはあるけれど、次、そのまた次と考えてゆける第一回だったと思う。

 ソーラン! ソーラン! 砂浜の上で声が上がる。ソーラン! ソーラン! そういえば、誰一人音を上げなかった。どっこいしょー! どっこいしょ! またどんな人が参加してくれるのだろう? どっこいしょー! どっこいしょ! 次は鎌倉だ。

 

   *

 

 第柔人にはもう一つやることがある。いや、こちらこそが、第柔人の本当のステージであるとも言える。

 

 ボラカフェ。

 

 今回の東日本大震災のボランティア活動について、いったいどんなことをすべきなのか、また可能なのかを討論する場だ。

 会場は茅ヶ崎のイベントスペース『リベンデル』。静かな住宅地のなかに、さらにひっそりとある日本家屋で、風が吹き抜ける屋内は空調無しでも十分に涼しい。

 人が集まってきたところで、ボラカフェが始まった。掲げた目標は、何かひとつ、決める事。

 

 導入はまず、第柔人やボラカフェについての説明と再確認。ボランティアをどう進めて行くかなど。「わたしたちはやめない」というパワーポイントで映し出された文字が印象的だった。

 

 次は実際に現地でボランティア活動をしたメンバーの報告。いいことも、悪いことも、とにかく報道ではすくいきれないものを伝える。命に関するような現地で聞いた悲惨な話のときには、会場の空気も張りつめた。

 

 さらに次は、ボランティア活動とはどんなものか、市街地や住宅のヘドロ出しを行ったメンバーによる具体的な説明。ヘドロとはなんなのか、そしてヘドロを出す作業とはどんなものなのか、写真や図面を使い詳細な説明が加えられる。

 

 では、今後いったいどんなボランティア活動が考えられるのか、どんな物が必要とされているのか、いくつかの例が示されたところで、ゲストトーク。NPO団体『シーズ』のじんさん登場。とても大切なお金――寄付について――の興味深い話をしてくれた。

『ただ「なんとなく」で寄付をしたり、「出して終わり」な寄付になってしまっては当事者意識も薄れますしね。そうならないためにも、いろんな選択肢を知ってその中で自分が一番いいと思うものを選ぶのは、とても意味のある事だと思います』とは、じんさんが用意してくれたプリントからの抜粋。

 

 さてさて、なんとなくここまでのレポートが駆け足になったのは、ここからの経過こそが重要であり、そして書くのが非常にややこしいからだったりする。

 簡単に言ってしまえば、じゃあ第柔人でなにをやるか皆で“考えましょう”“決めましょう”という流れになる、のだけれど、それが単純でない。

 説明すると、班を三つに分け、それぞれのテーブルでアイディアを出し合ってもらう。それだけだとよくあるブレインストーミングだけれども、ボラカフェではさらに、ここにシャッフルが加わる。制限時間が過ぎたら一度決まった班を解体して、新しい班を作ってまたブレストをする。これを二回繰り返す。

 最後、それぞれの班でアイディアを一つに絞ってもらい、三つの班から出そろった三つの案を全体で競わせる。

 いったいどうなるんだ? ――たぶんそれは、この方式を採用したメンバーにもわからなかった事だと思う。筆者もこのシャッフル型のディスカッションに参加した。実に様々な案が各テーブルで展開されていた。

 例えば、

 現地に目安箱を置く。

 主婦層など的を絞って参加しやすいボランティアツアーを企画する。

 観葉植物を送る。

 海外とも連携する。

 などなど……。とにかく、ばらばらだ。

 

 では、最終的に出そろった案はどんなものだったか?

 

1、Webを通じて現地と交流し、ニーズなどの情報を得る。

2、現地のソーラン節を踊るグループを探し、ソーラン節を通じて交流しながらボランティアを進める。

3、現地で(共同)ボラカフェをやる。

 

 ――なぜか、どれもあまり違わないのだった。

 すべての案が、どこかしら別の案とかぶるところがある。意見を一つにまとめるために論争が繰り広げられるかとおもいきや、そんなことはなかった。どれか一つの案以外を却下する必要は無く、ただはじめに何をするか決めればいいだけだった。

 コミュニケーションをとる相手を探すということ。

 

 この現象を、頭のいい人ならきちんと理論立てて説明できるのかもしれない。けれど、このレポートの筆者の印象で言わせてもらえれば、きっと、皆思っていたことは一緒だったのだ、ということに尽きる。つまり、知りたい、関わりたい、ということだ。

 必要なものがあるなら、それがどんなものか知りたい。

 困っている事があるのなら、それがどんな事か知りたい。

 第柔人にはどんなことができるのか、それが知りたい。

 もちろん、知って、はいさようなら、というわけにはいかない。この世には、知っている事で生じる責任があると思う。ただ、災害の規模からして、軽く背負える責任ではない。でも、一人では重くて無理でも、第柔人ならその責任を果たせる気もしている。国を動かすような力は無いけれど、じゃあ私たちには何もできませんなんて言う謙虚さも持ち合わせていないのだ。

 第柔人はできることを探す。それをやる。

 

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コメント: 4
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